ローとの取引からドフラミンゴは何を恐れていたのか

こんにちは、ドンキホーテ・ドフラミンゴをなんて呼ぶか迷ってドフラミンゴくんで落ち着きました、チユコです。口当たりがいいのでオススメ!

 

こちらの続きです。

前回ドフラミンゴの世界や人間の定義について考えました。

これをベースにさらにドフラミンゴについて深堀していきます。

 

※「ONE PIECE」ドレスローザ編までのネタバレを含みます。

※個人的な感想です。

 

ローとの取引

四皇カイドウを怒らせることをローが話に出した時、ファミリーから「若…顔色が…」と呟かれてました。

ドフラミンゴはただカイドウを怒らせることを恐れているだけなでしょうか。

カイドウを怒らせることで何か別の弊害があるのではないでしょうか。

ローとの取引によるデメリットから、ドフラミンゴが何を失いたくないのか、そして何を恐れていたのかを考えます。

 

ローの要求

ローはマッドサイエンティスト・シーザーを人質とし、返還する代わりに「ドフラミンゴが王下七武海辞めること」を要求。

 

前提条件

ドフラミンゴ(ジョーカー)は四皇カイドウと人工悪魔の実「SMAILE」の取引をしている。

 

「SMAILE」をつくるために必要なもの

薬品「SAD」

パンクハザードに工場がありましたが、取引の時点でローが破壊済み

薬品はシーザーのみ製作方法を知っており、工場がなくとも「シーザーさえいればどうとでもなる」のでどちらにせよシーザーが必要不可欠。

 

トンタッタ族

薬品「SAD」と果実を合わせ、ドレスローザにてあらゆる作物を育てられるトンタッタ族が栽培・量産。なおトンタッタ族は騙して協力させている。

 

王下七武海であるメリット

・略奪のライセンス

・政府公認の海賊であるお墨付き

・部下を含めた自分の海賊団が政府に追われない

ワンピースの世界では基本的に海賊は犯罪者であり、名を上げた海賊は賞金首として政府に追われます。

 

1.シーザーと引き換えにドフラミンゴが王下七武海を辞める

ローとの要求通りにすればシーザーが戻り薬品「SAD」を製作できる…と思いきや、王下七武海を辞めることはドレスローザの王位を放棄することとセットです。

なぜかというと、どんなに正統性があろうとドフラミンゴは海賊であり、七武海の称号が無ければ「略奪者である海賊が治める国」になるからです。

王下七武海であるからこそ、政府公認の海賊が治める国として認められます。

ローが取引を持ち掛けた際にファミリーが「もうドレスローザに居れなくなる」と言ってました。

七武海でなくなるのであれば、国王であろうが海軍から追われる海賊でしかないのです。

 

ドレスローザに居られなくことはさらなる被害があります。

ドレスローザ国内でトンタッタ族が栽培・量産し、地下の港にて裏の取引を行っています。

つまりドレスローザに居られなくと、シーザーが戻ってきても「SMILE」が栽培・量産できず、巨大な取引場も失うことになります。

 

2.シーザーを犠牲に王下七武海を辞めない。

ローとの取引に応じない場合、王位は保つことができ海軍に追われることはありません。

しかしシーザーが戻らないと薬品「SAD」を製作できず、どの道「SMILE」はつくるのは不可能です。そうするとカイドウとの取引ができない。

その後の対応次第でどうなるかはわかりませんが、結果として取引に応じた形になったのは、ローの予想通りドフラミンゴはカイドウとぶつかるのは避けたかったと考えられます。

 

まとめます。

・王下七武海の称号によって、王位の維持とドレスローザの居住が可能

・ローの取引に応じても破断になっても、どちらにせよ「SMILE」がつくれない

 

つまりローの取引が成立しようが破断になろうが「SMILE」はつくれないから、どの道海軍やカイドウと戦う羽目になります。完全にドフラミンゴを刺す取引です。

 

ただ自分が生き延びるのであれば、ローの言う通り昔のように一海賊に戻ればいいだけのことです。

カイドウと戦いたくないのか海軍に追われる生活をしたくないのか、はたまた両方か。取引の破断の弊害を恐れているのか、他に理由があるのか。

ここをもう少し掘り下げます。

 

天国と地獄

前記事でも書きましたが、ドフラミンゴはマリージョアを天国、それ以外をゴミの掃き溜めのような世界・地獄と言ってます。

これは権力構造における選民思想な面と、ドフラミンゴ自身の経験に基づく面を持ち合わせています。

 

ドンキホーテ一家は聖地から北の海に移り住み、天竜人とバレたことで天竜人を恨む人間達によって凄惨な迫害を受けています。

ゴミから漁り食べる物を確保しなければならず、不衛生な環境で母は死んだ。どこに逃げようがいつまでも人間達に追われ磔や火あぶりにされました。

聖地にいる天竜人は、安全な場所にいるから天国。

いつ死ぬかも分からない、生きていくにもやっとなこの世界は地獄。

命の危機を感じて初めて「聖地は天国だった」と思ったのではないでしょうか。

 

ドフラミンゴは一度聖地に戻ろうと試みましたが、逆に天竜人からも追われることとなります。

口ぶり的に一度ではなく、その後何度も刺客が送られていたようです。

そして海賊になると今度は海軍からも追われます。

ドフラミンゴは北の海に降りてきてから七武海入りするまで、人間や政府に追われる生活をしていていました。

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ドレスローザ

ドレスローザという国は800年間リク一族が治めており、それ以前はドンキホーテ一族が統治していました。

「おれはドンキホーテ・ドフラミンゴ 今帰った この国の正統なる王だ!!!」

ドレスローザはドフラミンゴの祖先がドレスローザの王族の国でドフラミンゴのルーツです。

ドフラミンゴはただ王になりたかったのでしょうか?

ドフラミンゴとファミリーがなぜドレスローザの国盗りをしたのか考えます。

 

長らく仮拠点はあっても追われる生活をしていたファミリーですが、乱心した王を鎮圧したヒーローとして10年間ドレスローザに居住してます。

なぜドレスローザを拠点としたか。

ドレスローザの近くに住むトンタッタ族が必要だから?

トンタッタ族は「SMILE」生成に必要不可欠でしたが、ドフラミンゴが2年前に「時代はスマイルさ」と言ってたこと、シーザーがフリーになった期間と合わせると、2~3年以内の事業であることが推測できます。

ファミリーが国盗りをしたのは10年も前なので、ドレスローザの国盗りの動機は「SMILE」関連ではありません。

 

では取引のために大きな港が必要だったのか?

取引場のためならわざわざドレスローザじゃなくてもいいですよね。

少なくとも13年以上前から国盗りの計画があったこと北の海に居る時から新世界に位置するドレスローザに狙いを定めていたことから、国盗りはドフラミンゴの個人的な願いが大きく反映された行為だったと考えられます。

そこら辺の国ではなく自らのルーツの国に狙いを定めるのが、ドフラミンゴの血への誇りと失ったものへの感傷を感じます。

つまりドレスローザの国盗りは、存在しているが帰ることが叶わない故郷を求めていたのではないでしょうか。誰かに追われることがなく安全で安心できる場所。

ゴミの掃き溜めのような世界の中にある天国は、ドフラミンゴにとって奪われたものを取り返す意味もあったかもしれません。

 

王である理由

さらに自分の祖先が王族であること、ファミリーから王の役割を求められていたこと、そしてドフラミンゴは天竜人である(あった)で、そもそもが上に立つ側という自認と噛み合った結果、王位に就く以外の考えはなかった気がします。

国盗りせずただ住むことはファミリーを切り捨てることと同義です。

 

人間に壮絶な迫害を受けたことで支配する側から支配される側を経験し、「もう二度と支配されたくない」という気持ちはかなり強かったのではないでしょうか。

迫害を夢に見てうなされていたので相当心の傷は深いです。

ミソが「支配したい」じゃなくて「もう二度と支配されたくない」という欲求。

前者ならどんな地位でも支配しようと思えばできるけど、後者はトップ以外にはつけません。

新世界では四皇の傘下に付くか戦うか選択させれれると四皇ビッグ・マムの部下ペコムズが言ってましたが、ドレスローザ編のドフラミンゴの性格上、傘下には付きたくないんじゃないかな~と思います。

カイドウとの関係も、内情はどうあれ取引においては対等です。だからこそ手放せなかった。

 

傘下には加わりたくないなら戦うしかねェよな!?とならないのがドフラミンゴだと思うのですがどうでしょう。

敵わない相手と正面から戦う以外の知識や武器や能力がある人だからね、ドフラミンゴくんは。

格上相手と戦う覚悟がキマってないことから、ドフラミンゴは安全や安心を再び奪われることを恐れているのだと考えました。

 

以上から、ローとの取引はとてもじゃないけど許容できることではありませんでした。

自分やファミリーの安全が脅かされること。

再び支配されること。

折角安全で安心できるように住処を手に入れたのに追われる日々。

ローが持ち掛けた脅しという名の取引は、ドフラミンゴの海賊人生で取り返してきたものがすべてが奪われることと等しい取引です。

これが天敵のDかあ。

そりゃ顔色悪くなるし、ブチ切れて七武海なのに海軍を攻撃しちゃうよ。

巻き込まれた海軍には同情するけど、スモーカーくんがヴェルゴのことで煽ってるからそこはしょうがない。

 

ちなみに2年前の頂上決戦編にて、ドフラミンゴ曰く「上」なる人物に「おれはいつでも七武海を辞める」と言ってましたが、これは脅しだと解釈しています。王下七武海の称号も交渉のカードに使う強かな男です。

 

安全と安心

かつて将来の右腕に、と育てたローが牙をむいた事実はドフラミンゴの胸中を思うと悲しくなりますが、作品メタで考えて救いの側面もあったと考えてるので追々書きます。

ドフラミンゴ自身、何が欲しいのか何に傷付いてるのかよくわかんなくなってそうですが、他でもなくルーツのドレスローザを国盗りしたのはシンプルに安全と安心を欲していたと考えました。

求めてることはマズローの五大欲求の下の方なのに、やり方や手段のスケールがデカすぎる。国ひとつどころか影響力は世界規模。

 

二年前の得体のしれない大物感がなくなって残念に思った人もいるようですが、だからこそ私のように好きになった人もいるわけで。

求めてるのが個人的で初期の欲求なのに振るわれる手腕の規模が世界って、ゆうてしまうとコスパが悪いところがドフラミンゴの実現能力の高さを表しています。

安全安心欲求がドフラミンゴの感受性とめちゃくちゃ密接で、そこにものすごく人間を感じてしまいます。

 

ということでローとの取引からドフラミンゴが恐れていることを考えました。

次はファミリーについて考えます。