ドフラミンゴは助けを求められない

初見でパンクハザード編を読んで早数ヶ月、新鮮にドフラミンゴくんが好きだと思う今日このごろ、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

悪役として100点満点中5千兆点の男、ドンキホーテ・ドフラミンゴをよろしくお願いします。

 

今回は人間と神についてメタ視点で考えると共に、作中においてのドフラミンゴの感情面についての心理をみていきます。

 

こちらの続き

超個人的な感想です。

※ホールケーキアイランド編までのネタバレを含みます。

人間

ワンピースの世界は天竜人と人間の対立構造があり、天竜人は別名世界貴族とも呼ばれています。

また魚人・人魚・半漁と人間の種族間の差別や対立構造が残っていますが、天竜人はまとめて下々民としています。

ここでは天竜人とそれ以外の種族をまとめて人間と定義。

 

「愛と情熱とおもちゃの国ドレスローザ」のおもちゃは元人間であることから始まり、

ドレスローザ編では「人間とは何なのか」という問いがたくさん出てきます。

 

天竜人として生まれながら、「人間ですよ 初めから」と、権力を放棄し一家で北の海に移り住んだホーミング。ドフラミンゴの実の父です。

移り住んだ時に認証チップを回収され、人間の迫害にあって聖地に「妻と子供だけは帰らせてほしい」と懇願しましたが二度と帰ることはできませんでした。

天竜人についてはまだ謎が多く、世界政府を創り上げた子孫は須らく天竜人と思いきや、ネフェルタリ一家は800年前に聖地に住むことを拒否し、アラバスタの王族として国を統治しています。つまり天竜人ではない。

特権階級の称号の意味なのか、血が重要なのか、その辺はまだ不明な点が多い。

ホーミングの「人間ですよ 昔から」は、前者の意味が強い気がします。

 

ホーミングの息子ロシナンテは、「おれの故郷では行儀の悪い子は”ディー”に食われる」「ある土地では”Dの一族”を”神の天敵”と呼ぶ」「”神”を仮に天竜人とするなら(以下略)」と言っています。

故郷=聖地と考えると、自分のことは元天竜人だとあまり思ってなさそう。あくまでロー視点の回想なので確ではないです。

 

「”戦う”と言えば聞こえはいいが”56し合い”など人間のすることではない‼」

「ドレスローザが800…戦争のない事は我らが”獣”でない証」

「”人間”である為の努力をした‼ 殺人を犯さなければ生きていかんと言うのなら私は進んで死を選ぶ‼」

56しはせぬと言ってますが、56された親友を報復したキュロスをコロシアムの戦士に見出し、後に軍隊長に抜擢しているリク王。

 

「どこまで行こうが生涯人56しの”獣”‼」と、娘に人を56すのではなく、自分を守る戦闘術を叩き込んだキュロス。

 

人56をしたキュロスを嫌悪していたが、命を助けられたことで恋をし、夫婦になった王女スカーレット。

 

「どこまで行こうが生涯人56しの”獣”‼」と、娘に人を56すのではなく、自分を守る戦闘術を叩き込んだキュロス。

 

ドフラミンゴを討つと心に決めながら、剣闘士としてコロシアムで戦いながらも母スカーレットの「人を傷つけちゃダメ」という教えを守り続けてたレベッカ

 

ルフィ達主人公側の味方であるリク王やキュロスの言う「人56しをするのは獣」「人間でい続けるための努力をした」というのが善であり正しく思えますが、過去編ではそれこそ人間である民衆が復讐ではなく、凄惨な報復を元天竜人にしています。

つまり少なくともドレスローザ編では、人を56さないことが人間なのではありません。

リク王だって人56しをしたキュロスを抜擢してるし、娘との結婚を受け入れてますからね。

 

この中で唯一ドフラミンゴだけ、自認が(堕ちた)天竜人です。

神の血を引く者とし、お前ら人間とおれとは違うと発言していることから、ドフラミンゴだけ人間の自認ではありません。

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人間たる者

人を56したから人間でなくなる訳ではない。そして作中で神の血を引く者としての自認があるのはドフラミンゴのみ。

では人間にあってドフラミンゴにはないものは何なのか考えます。

 

おもちゃになったキュロスは自分を忘れ死にゆく妻の亡骸を抱え、体温すら感じないとガタガタ震えてました。

おもちゃでも元は人間。体温を感じることができなくても、やるせなさや悲しみ、苦しみの感情をおもちゃになったキュロス自身感じています。

 

またローが病院で迫害され、「コラソン…治るどころか…おれつらい」と心を傷つけられたところに、「あん時お前おれを刺したけど…痛くもなかった…‼ 痛ェのはお前の方だったよな…かわいそうによォ…‼」と泣いて傷付いた心に共感したのがロシナンテ

傷付けたのはロシナンテが病院を連れ回したのが大本ですが、ローが寝てると思ってる時にもらした言葉は間違いなく本音で、ホワイトモンスター呼ばわりされたローの心を癒しました。

なお話のタイトルがホワイトモンスターで、こう呼ばれたローの迫害に怒ってる口でドフラミンゴのことをバケモノ・あいつは人間じゃないと言ってるのがエグイ対比だなあって思います。

この辺りはまた別記事に。

 

これらから、心の痛みになるような感情がドフラミンゴに欠けていると考えました。それがこれ。

「人間を虫ケラ以下に扱いやがって…‼ “苦しい”って‼“悲しい”って‼“辛い”って‼何だか知ってるか⁉ おい‼天竜人どもォ~~~‼」

ドフラミンゴの悪夢で迫害してきた人間の言葉です。

この苦しい、悲しい、辛いという感情。

ドフラミンゴは心がないとか、感情を感じないのではなく、感情に対してかなり鈍感にならざるを得ない状態だったと考えられます。誌的に言い換えると心に穴が空いたような感じ。

感情に良し悪しはないのですが、苦しい、悲しい、辛いという感情は痛みになりやすく、不快な感情なので自覚がしやすい。

ドフラミンゴはこの痛みが、感情が、感じにくかったり感じないよう抑圧していた心理状態だったと考えています。

 

なぜなら痛みを感じて涙が出ようもがな、弱みを見せることになるから。

痛みをいちいち感じてたら心がすり減るから。

泣いて立ち止まっていては死んでしまうから。

感情を感じなかったり抑圧するのは、一種の防衛反応です。

悪夢を見て魘されたドフラミンゴ、アルコールで流してましたね。

すっごいセクシーだったことはさておき、感情を発散するのではなく流して感じないようにしたり、感情を無視をするような感情を抑圧し続ける精神的ストレスは計り知れません。

 

感情の発散は子供のように泣いて喚くなど、感情を認めて感じ切ることが自分を癒す行為なのですが、ドフラミンゴは感情をアルコールで流したり、抑圧する以外の方法を知らなかったのではないでしょうか。

それを許される環境でなかったから。

 

助けを求められない

ロシナンテが「あいつは人間じゃない…」と思い起こしたところ、一家が磔にされ父は子供達だけは助けてくれと懇願し、ロシナンテは痛い死にたいと泣いてました。

一方ドフラミンゴは涙を流しながら「何をされても生きのびてお前らを一人残らず56しにいく」と宣言しました。

これは性格もありますが、防衛反応が攻撃性に転じやすい環境であったことも考慮したい点です。この時攻撃に転じなければ死んでしまいますからね。

 

磔にされた時のドフラミンゴの立ち位置を考えます。

ドフラミンゴは庇護する側の父が劣悪な環境の原因であることを知ります。

家長の父は頼りにできず、母は病気で自分より小さい弟がいる状況で、自分がやらなきゃいけない、自分がなんとかしなきゃいけない思わざるを得ない立場であったことは間違いありません。

この「自分がなんとかしなきゃ」という思いは、他者に助けを求めることをより困難にさせます。

覇王色の覇気を発現し、迫害される環境を脱しようとした考えが「父の首を持って聖地に帰る」でした。トレーボルがそそのかした?という説もありますが実際は不明。

 

この「自分がなんとかしなきゃ」は、ここで終わりません。

劣悪な環境からの脱出を求め、聖地に戻っても帰ることは叶わず、逆に56されそうになります。

命からがらトレーボル達の元へ逃られましたが、ここでドフラミンゴは王として掲げられます。

庇護され心のケアを受ける時に、実態はどうであれ矢面に立たせるボス、庇護する立場になってしまいました。

正しくは庇護する親や大人がするような心の傷を癒してくれる人はいなかったし、立場上癒す側の方になってしまった。

 

ドフラミンゴは弱い自分を許せないという価値観があるので、防衛反応として「56されれてたまるか、死んでもなるものか」が攻撃に転じやすい性格ではあったと思います。

「自分がなんとかしなきゃ」は、ドレスローザ編でもよく見られました。

自分がなんとかできる力があったからこそ、部下の失態を許せたとも取れます。

 

パンクハザード編で「子供が泣いて助けてと言ったら助けるしかないでしょう‼」とナミが言う通り、ドフラミンゴは性格・立場・環境で何重にも重ねて助けてを言えない状態だった。

ゾウ編でブルックがモモの助のことを「ルフィさん ”跡取り”というのは成人するまではそれ程しっかりする必要はないものです 周りの大人がちゃんとフォローを…」と言ってました。ドフラミンゴくんのことを思い出して体調悪くなりました。

助けてを言える性格でもなかったし、助けを求めた先の聖地で拒絶され、受け入れてくれた場所ではあっという間にトップの立場に祭り上げられる…あの時のドフラミンゴはどうすりゃよかったんだようおおおん~~~~;;

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怒り

ヴィオラや藤虎がドレスローザの国民の怒りに満ちた声、怒りに満ちた悲鳴、彼らは泣いてるんじゃねェ…怒ってるんだよ…!!と言ってるシーンがあります。

世界政府が称号を与えドレスローザの王に君臨したドフラミンゴに傷つけられたからこそ、海軍に助けられたくないと言ったヴィオラ

同じ穴のムジナで海軍はこの国じゃヒーローになれねェ…筋違いだと後に国民に土下座をした藤虎。

ドレスローザで他にも怒ってる人いましたね。

そうです、ドフラミンゴです。

磔にされた時も「お前らを必ず56してやる」と涙を流しながら怒ってました。

あの時の救世主はトレーボルでした。

自分たちが迫害されるような目にあっているのも、それが原因で母が死んだことも、父に「もう取り返しがつかねェんだよ!!」と引鉄を引いた怒りの裏には。

ドフラミンゴが取りこぼした苦しい・悲しい・辛いという感情があったのではないか。

そんな気がしてなりません。

 

ドフラミンゴは別に傷付かない訳じゃないし、感傷に浸ったり忌々しいと感情を言葉にすることはあれど、非常に感情に鈍感です。

ドフラミンゴはもし自分の感情を自覚していたら。ドフラミンゴが痛みに耐えられない性格だったら、痛みが顔に出やすい人だったら、そもそも王として期待に応えられる能力が高くなければ…そんな”もし”があれば今のドフラミンゴになっていなかったと思うのです。

 

ラソンへの想いで感情を露わにし、根性丸出しの熱い男になっていたローに不快感を露わにしていたところに、ドフラミンゴの感情の感じ方が見て取れます。

真に理性的な人は感情をしっかり感じて理性で判断できるのですが、ドフラミンゴくんは感情を抑圧して理性で判断するから、割り切れなかったり呪縛になったり過去に囚われています。

結果としてドフラミンゴを理性的な人だと思っていますが、その実態は生きていくために早く大人にならざるを得なかった子供がそこにいる。

それがドンキホーテ・ドフラミンゴです。

 

子供の時は本当に救いがないなと思いつつ、取り返しのつかない引鉄は自分で引いてるので、自業自得だね…という気持ちと、いやいやそれにしたってあんまりじゃない!?という矛盾した思いを抱えてます。描かれ方がうますぎない?

持論ですがドフラミンゴはずっとストレス溜まってるとか、鬱屈とした精神の人とは思っていなくて、地獄で生きながらもそこそこ(あくまでそこそこ)エンジョイはしてる人だと思ってます。

それを踏まえて、今後ドフラミンゴの心に一筋の光が差すことを願わずにいられません。 おれ、ドフラミンゴのことが好きだから…

 

チユコはこれからも凶悪で強くてかっこよくて可愛くてセクシーなドンキホーテ・ドフラミンゴを応援してます。