オタクのシンプルライフ

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「君が人生の時」放浪とは、ジョーの精神である

「君が人生の時」、千秋楽おめでとうございます!もう10日も前の話ですか、早いですねえ。

坂本くんが出てなかったら、観にいかない舞台だったと思いつつも、この舞台を観られて幸せでした。

2回目は、メモを取りながら観てたのですが、メモに書いた字があまりにも汚くて、解読に時間がかかりました。

 

初見の感想

v-simple.hatenablog.com

 

 

 

 

ラストの印象の変化 

正直1回目にあまりに腹が立ちすぎて、「もう一回あのラストを観なきゃいけないのか…」と、正直気が進まなかった。わたし怒りすぎ。

ですが、いざそのシーンになると、初見に比べてあっさりしてて、憎悪に飲み込まれることもなかったので、周りを見る余裕がありました。

 

初見の時は、ブリックがキティの変わろうとした精神を、嘲笑していました。至ってナチュラルに見下し、笑ってた。まるで滑稽なショーをみるかのごとく。場にそぐわない軽妙なテンポの音楽と、ブリックの命令する明るい声のトーンがマッチしてて、「こいつ…腐ってやがる…」と思ったものです。

 

2回目の時は、少し神妙な雰囲気でした。声のトーンも、低くて落ち着いてた。尋問するような、命令してるような、見下すことには変わりないんですけど。

 

そんなことで、2回目は腸が煮えくり返るほどではありませんでした。ほんと1回目は辛かったので、精神衛生上は良かったです。でも舞台としては、1回目の嘲笑うように命令した方が、ブリックの腐った精神が浮き彫りになって良かったかなあと思います。

 

 

ラストにジョーが酒場を出て行ったあとのシーン

1回目では、ジョーが酒場を去ったあと、ブリックを銃で撃ったキットを、大盛り上がりでヒーロー扱いしていました。酒場の主人、ニックも。

ただ一人、新聞配達の少年だけは、窓から外を見つめていました。ジョーが去ることを惜しんでくれてるような気がした。

あの場でジョーを惜しむのが新聞配達の少年だけって、なんか寂しいな…と思ってたら、2回目は、ニックもほんの少し窓を見つめてました。キットとその周りの人たちの盛り上がり方も、若干トーンダウンしてた気がする。

 

1回目で感じたさみしさは、2回目で少し緩和されました。ジョーを思って気にしてくれる人は、たくさんいるんだよ。

 

大本の台本こそ変わらないけど、役者さんの表現は、回を追うごとに変わりつつあったのかな?という印象です。

記憶が間違ってたらどうしよう…

 

 

ジョーの印象の変化

ao-theloved6.hatenablog.com

 

こちらのブログでジョーの印象の変化についてを読み、私も2回見てかなり印象が変わったわーと思ったので、書きます。

 

最初の想像では、髪が長めでゆるウェーブ、髭を生やし、ポンチョみたいなドレープを巻いて、足元まであるロングコートを着て放浪者でした。ゾロの風貌をもっとゆるく、けだるくした感じの風貌をイメージしてました。

 

実際は、髪をまとめ、髭を整え、ダブルのコートを着込んだ容姿から、上流階級の紳士かと思いました。少なくとも、この風貌から「放浪者」とイメージはできない。

 

【放浪者】

あてもなくさまよう人。

     ー出典:デジタル大辞泉

 

ジョーは、4、5年前にニックの酒屋を訪れ、仕事もせずに、毎日来てはシャンパンを飲んでるので、流浪のような、あっちへふらふら、こっちへふらふらする人ではありませんでした。

 

よくよく思い出すと、舞台中で「放浪者」と自称してないし、可愛い弟分トム(橋本淳)の仕事を紹介するのに、運送会社の社長へ電話一本で融通を利かせるツテは持ってるし、多分戦争関連で稼いで生活できる財力もあるので、「放浪者」のイメージの矛盾が起こったんだと考えられます。

 

 

劇中のジョーの印象 

ちょっと言うの恥ずかしいのですが、私最初ジョーのことを未来人だと思ってました。

だって何かを悟ったような空気で、人に尋ねてた(ように感じた) から。

あの酒場に混じってるようでも、明確に纏う空気が違ったから。

 

でも話しが進むにつれ、未来人というより、他の登場人物とは違う傍観者だと思いました。斜め上から物事を眺めてる。

 

 

でも2回目観たら、その印象は変わりました。

ジョーも1940年代、アメリカ西海岸酒場で生きてる人間なんだ、と。

他の方が書かれた考察を読んだり、私の物語の取り込み方が変わったことも大きいと思います。

だから、ラストにジョーが去るシーン、1回目より2回目の方が悲しかったし寂しかった。それは、ジョーのことを生きてる人間だと認識していたから。

もう酒場に戻らないだろうな、と感じざるを得ない、あの寂しそうな背中が目に焼き付いてます。

 

 

ジョーの好きなシーン

前回「可愛いとは思ってない(キリッ)」と言ってましたが、可愛いところいっぱいあったよ!

ニックと親し気な女性が嵐のように去っていき、「今のなに」っていう言い方とか、音楽に合わせて、人形を躍らせてるところとか。

 

一番好きなシーンは、キティの部屋で、トムとキティが、過去の夢物語をごっこ遊びするシーンでの、ジョーが二人を見守る姿。

 

ジョーの目が、泣きたいほどにやさしかった。

 

子を見るような目でも、親友をみる目でもない、深い愛情がある眼差し。

 

あんな眼差しで見られてたことを、トムとキティは知ってるのかなあ。そういう目で二人を見守ってたと、ジョーは自覚してるのかなあ。してないだろうなあ…。

 

 

 

舞台上の伏線

伏線というか、ストーリーと人と物の関係というか。

 

ジョーの母の話をしていると、ニックと親しい女性が現れ、誰かと思ったららニックの母だったり、トムに拳銃を買ってきてもらい、ジョーが拳銃を堪能していると、キットが酒屋に入ってきたりします。後者はキット=拳銃を表してるのは明白です。

 

記憶にあるのはこのくらいですが、きっと他にもこういう繋がりがあったはず。

 

 

ジョーの哲学

「人間は素晴らしい。」

「人間生きてるだけで芸術だ。」

 

ジョーはこう言いつつ、自分に対しては

「24時間のうち23時間30分は、何の意味もない。待てば待つほど意味がなくなる。」

と、苦々しく言ってます。

 

「俺は統計学より、夢を信じてる。」

ジョーは、夢のある人が好きです。

家庭が欲しい。大きい家、広い部屋に住みたい。あの人と結婚したい。世界中が俺のことを知る有名なコメディアンになりたい。

愛、金、名誉…これらを欲する人にも、ジョーは敬意を持ってます。純粋になにかを追い求める人を、あたたかい眼差しで眺めてます。

 

しかし、自分ではこう言っています。

「俺のしたいこと?ねぇな。」

 

ジョーは「こうなりたい」「こう在りたい」という夢を持っていません。愛とか金とか名誉も欲しいと思ってません。

 

 

放浪者とは

坂本くんは雑誌でたびたび、ジョーのことを「若くて美しい放浪者」と言ってました。それを見て、勝手に妄想を繰り広げてたので、前述したように、イメージと随分と違っていました。

 

この舞台における放浪とは、ジョーの精神のことだと考えました。

「24時間のうち23時間30分は、何の意味もない。待つことだけだ。待てば待つほど意味がなくなる。」

ああしたい、こうしたい、こうなりたいという夢もなく、ただただ何かを待ってるだけです。

話の流れは分かりませんが、「瞬間死んでる」「愚かしさだけ」という文字があるので、たぶんジョーが言ってたのでしょう。

 

メモをみると、メアリー(渋谷はるか)に「誰を待ってるの?」と尋ねられ、ジョーは「俺も誰。」と答えたようですが、さっぱり分からない…。

上記から推測すると、ジョーは夢を待ってるではないでしょうか。自分が夢を持つことをずっと待ってる。

 

「俺は何も分かってない。だから、分かろうとするんだよ。」

このセリフも、達観してるようで、深層では夢を待ち続けてる気がしてなりません。

 

 

タイトルの意味

坂本くんが「タイトルの意味を考えて下さいね!(要約)」と、どっかで言ってたので私も考えました。

 

「君が人生の時」 「The life of you」

 

直訳すると「君の人生」で、いいんですよね?(英語レベル1)

わざわざ「君が人生の時」と訳したことに、意味があるような気がします。

前者は「君の人生」という名詞ですが、後者は「君」が主語です。これかなり大きな違いです。

 

「君の人生」だと、主役が「君の人生」です。「君」、ではない。過去や未来を含めた全ての人生を表しているような印象を受けます。

一方、「君が人生の時」の主役は、「君」です。あなたが人生の時なんです。「君の人生」だと、人生そのもののような、広い意味を持ちますが、「君が人生の時」だと、「時」が付いてることによって、今や現在に焦点が当たってます。

 

「君が人生の時」は、「君が人生を創っていくんだよ」と、問いかけてくれてるような気がしました。

 

「君」とは、舞台の登場人物であり、観客でもある。

数分しか出てこない役でも、彼らも人生の主役だし、俯瞰で見てた大勢の観客も、それぞれの人生の主役です。

 

「ジョーの人生の時」は、なんなんだろう。

コメディアンのネタ見せの時、最初ジョー微笑みながら見ていましたが、戦争の話になると途端に顔を顰めます。

 

俺はここにいるっていうのに、新聞は74マイル離れたヒトラーばかり

 

これは、世界情勢を表してますが、酒場のジョーのことだと思いました。

ジョーはここにいるっていうのに、いつも注目されるのは他の人。注目されても、金に関することばかり。

ジョーの悲痛な叫びのように聞こえるのは、私がジョーに入れ込んでるからかもしれません。 

 

 

人が変わることの難しさ

この舞台を観て、一番身に染みたのは、人はすぐには変われないということです。

変わりたい、こんな状況はもう嫌だと言いながらも、なかなか変わることができない。

 

こんな仕事嫌いだと言いながら、この先の収入、家族を巻き込むことを心配して、警察をやめない警官。

キティもレディな服に身を包み、良いホテルに住むことになっても、前と変わらずよく泣いてました。嫌な仕事をやめ、ずっと良い場所に住んでるにも関わらず。

 

人は、変えようとして行動しなきゃ変われないし、環境が変わっても、思考が昔と同じだったら、変わることはできない。みんな、今の状況に愚痴を言っても、そこから脱出しようとしてない。結局変わるのが怖いんだ。

 

ジョーだって、何年もニックの酒屋で停滞してました。シャンパンを飲み続け、人の夢を聞くばかり。しかし、最後は出て行くことを選びました。

自由ではない脚を、引きずりながらも歩き出したジョー。扉の向こうで、夢を見つけ、満たされてほしい。「人間は素晴らしい」と言ってるんだから、そのカテゴリーに自身もいれてほしい。

 

アイルランドの瞳が輝くとき 世界が微笑む*1

 

ジョーの瞳が輝くと、たしかに観客の私は、満たされたよ。

ジョーよ、永遠あれ。

 

*1:劇中歌